小売では「先入れ先出し法」をやってはいけない!?

今日の言葉は小売業界の雄、イトーヨーカ堂社長・セブンイレブンジャパン会長
鈴木敏文氏の言葉を引用する。



先入れ先出し法は絶対に売り手側の理論でしかない」




その真意の前に、私も簿記の学習経験がありますので、そこから、
先入れ先出し法」・・・仕入れの古いものから順に販売する(スーパーの牛乳など)。
「後入れ先出し法」・・・仕入れの新しいものから順に販売する(炭鉱の石炭など)。



ということで、小売業は賞味期限が限られる先入れ先出し法を旨とすべし。



と学習、理にかなっているし、それが常識と思ってました。



でも、違う理屈、というか、小売業の本質を見誤っていたようです。
前述の通り「先入れ先出し法は絶対に売り手側の理論でしかない」のです。



なぜか・・・


それは、先入れ先出し法における、お客様の視点が失われているからです。


小売では、最も尊い存在のお客様は、牛乳などなるべくできたてでフレッシュなものを
買いたいと考えるのは必然です。



しかし、先入れ先出し法はそれを阻害し、古いものフレッシュではないものから先に提供する方法です。
例えば惣菜の「てんぷら」はなるべくあげたてを買いたいと思うものですが、先入れ先出し法だと、
全てのお客様に「作り置き」の古いてんぷらを提供するという状況になってしまいます。


てんぷらという商品は揚げたてが最も商品価値があります。
揚げたてを商品価値100%とすると、そこから20分経過したてんぷらの商品価値は何%でしょうか?



でも値段は商品価値100%のできたての商品価値から算出し、古くなっても値段が下がることはタイムセール以外にはありません。




先入れ先出し法は「在庫」を考える際に「なるべくムダがでないように、損しないように」と売り手がとりたい方法にすぎません。



お客様がそれを望んでいることは無いでしょう。



なので、売り手の理論なのです。



ちょっとこの話「目からウロコ」でしたね。
そして、そんなことも意識できなかった、気付かなかった自分に良い警告となりました。




また、ロスが出たら、ロス分の出費はコスト増となり、他の商品価格値上げの誘因ともなりますし、
無駄を出すことは、社会的な資源の損失としても良くないので、「先入れ先出し法」はお客様は許容してくれるのでは・・・


とも思えそうですが、それは甘えです。



お客さまが望んでいるものは、食材などであれば、間違いなくフレッシュな商品です。
お客様の望む商品を提供することこそ、商人の本懐であるはずです。

小売業という商人である以上、死に筋商品や売れ筋商品の仕入れ管理、在庫管理をタイムリーに徹底して、
いつもフレッシュな商品を提供できることを考える。それが、ロスを出さないことにつながる。



という、まずはお客様の要求に応えられる努力をしなければ、商売をする資格がないといわれてもしょうがないでしょう。


いきなり「先入れ先出し法」のような、在庫リスクを最小にする陳列形態を採用してはいけません。
まずはフレッシュなお客様の望む商品を提供することを考え、そこに障害があるならそれを乗り越える努力をすること。


いきなり、とりあえず「先入れ先出し法」では、雑です。


そして、お客様が気の毒です。



セブンイレブンやイトーヨーカ堂が小売業界の雄であり続ける真の理由を垣間見た気がします。



その理由とは「根底に流れる、商人の魂」だと私は強く感じます。



カッコいいです。